はんだ付けがうまくいかないとき、たいていは腕のせいにされます。ところが症状を並べてみると、ほとんどが「熱が足りない」か「熱が多すぎる」のどちらかに収まります。
見た目はバラバラです。光沢がない、玉になって乗らない、ランドが剥がれる、部品が壊れる。それでも原因は1本の軸に乗っています。どちら側かを判定すれば、直す方向が1つに決まります。
この記事について — 本稿は熱の伝わり方から書いた解説です。この記事は実機での検証を伴いません。個別製品の比較テストは行っていないため、「この製品が一番良い」とは書きません。図解は自作です。
症状から熱の過不足を判定する
| 症状 | どちら側か |
|---|---|
| 表面に光沢がなく、白っぽく曇る(イモはんだ) | 足りない |
| はんだが玉になって母材に乗らない | 足りない |
| なかなか溶けない、時間がかかる | 足りない |
| 見た目は付いているのに導通しない | 足りない |
| 冷めてから割れる、取れる | 足りない |
| ランドが浮く、剥がれる | 多すぎる |
| 部品が熱で壊れる | 多すぎる |
| はんだが飛び散る | 多すぎる |
| こて先がすぐ黒くなる | 多すぎる |
| 隣とつながる(ブリッジ) | 量の問題(別軸) |
イモはんだは、はんだが母材になじんでいない状態です。表面がザラつき、光沢がないのが見分け方で、見た目は付いていても導通不良を起こします。原因は予熱不足、つまり接合部が十分に温まっていなかったことです。
熱が足りないとき
「温度を上げる」は最後の手段です。先に効く順に並べます。
1. こて先を太くする
一番効きます。熱が伝わる速さは、触れている面積でおおむね決まるからです。
細かい作業だから細いこて先、と考えると逆になります。細いこて先は接触面積が小さく、熱が渡らない。かえって当てる時間が延びて、部品を傷めます。ランドを超えない範囲で、できるだけ太いものを選んでください。詳しくはこて先の選び方に書きました。
2. こてを寝かせる
立てて当てると、先端の点だけが触れます。寝かせると面で当たります。同じこて先でも、当て方だけで伝わる熱が変わります。
これも接触面積の話です。「寝かせる」と言われる理由がここにあります。
3. 母材を先に温める
はんだをこて先に乗せてから当てると、フラックスが先に飛んでしまいます。こて先をランドと部品の足の両方に当て、温まってからはんだを送るのが順序です。
はんだは温度の高いほうへ流れます。母材が冷たいままだと、こて先の側にだけ玉になって残ります。玉になるのは、腕ではなく順序の問題です。
4. こて先を掃除する
酸化したこて先には、はんだが乗りません。乗らないので温度を上げたくなり、上げるとさらに酸化する。この悪循環がいちばん多い詰まり方だと思います。
金属たわし型のクリーナーでこまめに拭い、使用後ははんだを盛って保護してください。
5. 温度を上げる(最後)
ここまでやっても足りないなら上げます。適温はおよそ350℃です。それでも足りない場合、こて自体の熱回復が遅い可能性があります。当てた瞬間の温度の落ち込みから戻れないと、いくら設定温度を上げても現場では足りません。この話ははんだごての選び方に書きました。
熱が多すぎるとき
こちらは対策が少なく、方向も1つです。当てている時間を短くします。
- 温度を下げる(350℃を大きく超えると、フラックスが瞬時に蒸発して飛び散ります)
- 1か所あたり2〜3秒で切り上げる
- 熱に弱い部品(電解コンデンサ、LED、フィルムコンデンサ)は特に短く
- 同じ場所を何度も当て直さない
皮肉なのは、熱が足りない状態を放置すると、結果的に熱が多すぎる側の症状が出ることです。溶けないので当て続け、部品とランドが傷む。だから「熱が足りない」の対策が、そのまま「熱が多すぎる」の予防にもなります。
量の問題 — ブリッジと盛りすぎ
ブリッジは熱の過不足ではなく、はんだの量の問題です。
- はんだを送りすぎている
- こて先に大量のはんだを乗せてから当てている
- ランドの間隔に対してこて先が太すぎる
直すには吸い取り線を使います。吸い取り線は「あると便利」ではなく、初日から要る道具です。初心者は必ず失敗するので、なければ間違えたまま進むか、無理に外そうとしてランドを剥がすかになります。
はんだの適量は、ランドと足のあいだに富士山型のなだらかな傾斜ができる程度です。丸く盛り上がっているのは多すぎます。
腕ではなく、道具と手順です
ここまでの対策を並べ直すと、器用さを要求するものがひとつもありません。
| やること | 種類 |
|---|---|
| こて先を太くする | 道具 |
| こてを寝かせる | 手順 |
| 母材を先に温める | 手順 |
| こて先を掃除する | 手入れ |
| 温度を適正にする | 道具 |
| 時間を短くする | 手順 |
うまくいかないとき、練習量ではなく、道具の選択と当てる順序を疑ってください。細いこて先で、酸化したまま、はんだを先に乗せて当てていれば、どれだけ慣れてもきれいにはつきません。
逆に、太いこて先を手入れして、母材を温めてから送れば、初回でもそれなりにつきます。
よくある質問
フラックスは別途買うべきですか
市販のはんだにはフラックスが入っているので、最初は不要です。ただし当てる時間が長いとフラックスが先に飛んでしまうため、時間がかかりがちな作業や、部品を外して付け直す作業では追加のフラックスが効きます。
鉛フリーはんだは難しいですか
難しくなる方向に働きます。融点が高く、濡れ広がりにくく、こて先の酸化も速い。練習中は鉛入りのほうが結果が安定します。作業後の手洗いは習慣にしてください。
イモはんだは付け直せますか
できます。吸い取り線で古いはんだを取り除き、こて先を掃除してから、母材を温めてやり直してください。上から新しいはんだを盛るだけでは直りません。中でなじんでいない状態が残ります。
こて先が黒くなってはんだが乗りません
酸化しています。金属たわしで拭い、それでも乗らなければ、こて先を溶かしたはんだに浸けて表面を作り直します(リカバリー)。改善しないなら交換時期です。
何秒当てるのが正解ですか
部品と基板の大きさによります。目安は2〜3秒で、それ以上かかるなら熱が足りていないと考えてください。時間を延ばして解決するのではなく、伝わる速さを上げるのが正しい方向です。
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